なぜ“オリジナル商品”が必要なのか? ミュージカル『アイ・ラブ・坊ちゃん』を観て腑に落ちた話
こんにちは。上杉惠理子です。
私の趣味の一つがミュージカルを観ることでして、2026年5月20日に、東京の明治座にミュージカル『アイ・ラブ・坊ちゃん』を観てきました。

観劇レポはこちらに書きました。
【和創塾ブログ】
着物と下駄で踊るミュージカル♪/『アイ・ラブ・坊ちゃん』観劇録
https://kimono-strategy.com/?p=9526
この作品を観終わって、マーケティングに必須の”商品づくり”について考えたのでした。ミュージカルを観たことがない方、好きじゃない方もいると思うのですが、良かったらぜひお付き合いくださいませ^^
海外の名作だらけなのに、なぜ日本発にこだわるの?
今回観た『アイ・ラブ・坊ちゃん』は、あの明治の文豪、夏目漱石が主人公。
漱石が『坊ちゃん』を執筆していた時のお話で、1992年に日本の音楽座で作られた日本オリジナルの和物ミュージカルです。
日本でミュージカルというと、『レ・ミゼラブル』『エリザベート』『オペラ座の怪人』『キャッツ』などなど、海外作品を輸入し翻訳したものがとても人気です。
『レ・ミゼラブル』『エリザベート』なんて人気過ぎて、ファンクラブに入っていたり、出演者・関係者とのご縁がないと一般販売ではほんっと!席が取れません、、、泣 それぐらい日本で人気なのです。
一方で、ここ20年、韓国がオリジナルミュージカルにも力を入れていて(歌やドラマだけでない!)、韓国発の作品が2025年6月発表のトニー賞(米国演劇界で一番の賞)を受賞しました。
そんな中で今、日本のオリジナルミュージカルをつくろうという動きが少しずつ出てきていて、今回の『アイ・ラブ・坊ちゃん』の30数年ぶりの再演にも繋がっています。
昨年2025年は山崎育三郎さん企画・主演で落語をテーマにした『昭和元禄落語心中』がミュージカルになりました。初演を観に行った感想を書いた記事も貼っておきますね。
【和創塾ブログ】
和のミュージカル爆誕!!/「昭和元禄落語心中」観劇レポ
https://kimono-strategy.com/?p=8461
『アイ・ラブ・坊ちゃん』の内容はもちろん素晴らしく、観に行ってよかった!!と思っているのですが…私が観た東京・明治座の平日夜回は、二階席はかなりの空席が…。今のミュージカル界を代表する井上芳雄さんが主演、新進気鋭の三浦宏規さんが助演なのに… なかなか厳しいと思いました。
でね。ふと思ったんです。
海外発でも大人気で、素晴らしい名作がいっぱいあるのだから、それを大事に上演すればよくない?
なんでそこまでして、日本発のオリジナル作品を作る意味があるんだろう??と。
どう思われます???
“自社商品”だから残るものがある
この問いを得て数日もんもんと考えまして… あ、そっか!!と腑に落ちました。日本のオリジナル作品をつくる意味/理由は、主にふたつあると考えました。
ひとつは、海外作品だけだと国内のクリエイターが育ちにくいから。
特に有名な大型の海外作品って、結構縛りがきついんです。
脚本・音楽の著作権使用料やライセンス料のお金を本国に支払うことはもちろんのこと。(契約内容は公開されていないのですが、、結構高いらしい、、)
演出や振付師、衣装さんなど、スタッフを本国から呼ぶことが条件だったり、舞台美術や衣装も本国指定だったりします。
また、俳優を選ぶときも、本国の人たちによるオーディションのことも多い。
作品のクオリティを守り高めるために必要なことともいえますが、海外の有名作品を日本で上演すると、少なくない売上の一部が海外に流れていく。
そして全部海外から指定されちゃうので、脚本家や演出、振り付け、衣装、舞台美術…といったクリエイター部門の人材が日本で育ちにくいということになります。
実際に手を動かすスタッフさんは日本人なので、その人たちが海外作品に関わることで学ぶことは多いと想像します。
でも、自分たちでゼロから作品をつくることとは、根本的に違う。
あちらこちらで聞きますが、オリジナル作品の初演は本当に大変…!!大道具はどうする?衣装はどうする?もちろん、宣伝もゼロからやらなければいけないので大変です。
それでもひとつひとつ手探りでつくるからこそ、得られることがある。
そして、日本に残る売上が減るということは、舞台の仕事をしたい人たちが経済的に厳しく、仕事を続けられるかどうかにも関わります。
これ。ビジネスの商品づくりにも通じるなぁと思って。。というか、ミュージカルもショービジネスだし。
オリジナルの自社商品を持つ、ということは、利益増にも直結するし、商品づくりをすることで人が育ち、蓄積していく何かが必ずあるということなのですね。
「なぜあなたが売るのか」は、想像以上に見られている
日本ミュージカル界がオリジナル作品を持つべき理由ふたつめが
海外に市場を広げるとき、オリジナルじゃないと難しい
からです。
確かに『レ・ミゼラブル』『エリザベート』などなど、日本で上演して満席御礼になる超人気作品はたくさんあります。私も正直、洋物が好きです。
ここでもし、日本のミュージカル(ここでは俳優さんも裏方クリエイターさんも含めます)が日本の市場だけでなく、海外にも市場を広げようと考えたとします。
お客さんの数は世界の方がもちろん多いし、日本の人口は減少しているわけですし。
もし、日本のミュージカル界が海外で上演したとき、その作品が海外ものだったら、お客さんは観にくるでしょうか??
ロンドンで、日本人が演じる『レ・ミゼラブル』が喜ばれる?
ニューヨークで、日本人が演じる『ウィキッド』が満席御礼になる??
実際に行われたことがないからNOとは言い切れないですが、かなり厳しいと想像します。
なぜ厳しいと思うのかというと、私の古巣 星野リゾート 星野佳路代表の話を思い出したんです。
星野リゾートは今、北米に温泉旅館で進出しようとしています。この背景には代表が若い頃の経験があります。
とある日本の大手ホテルが、80年代に北米に進出しようとして失敗、撤退したことがありました。その時のアメリカの人たちの反応が
「なんで日本がわざわざアメリカで、西洋ホテルをやるんだ??」
だったそうです。
…ミュージカルでも同じように「なんで日本からわざわざ、『レ・ミゼラブル』をやりにくるの?」と思われるかもしれない。
日本が海外で勝負するなら、日本がわざわざやる理由がないと通用しない。
ミュージカルも、海外に市場を広げたいなら、日本独自のオリジナル作品じゃないと受け入れてもらいにくい、ということなんです。そう考えると、歌舞伎の海外公演が成功するのは納得です。
ただ、「日本ぽいものを足して、海外に出ましょう」なんてことを言いたいわけじゃないんです。(和文化をビジネスに活かす話は今回は割愛!)
もうちょっと普段のビジネスに寄せると
売り手は「なぜあなたがこれを売るのか」とお客様から問われている
ということだと思うんです。
「自分が/自社がこの商品を売る理由」って、売り手が思っている以上に伝わっているし、問われているのだなぁと『アイ・ラブ・坊ちゃん』を見て考え、たどりつきました^^
ちなみに、『デスノート』『鬼滅の刃』など、世界的に人気になった漫画作品が2.5次元ミュージカルとして世界に出始めていてすごく強いです。これも日本のオリジナル作品!、
というわけで、ミュージカルを見ながら、いろいろ考えたお話でした。
異業種に学ぶのがマーケティング力を高める近道です。異業種にもどんどん触れてみてくださいね♪
上杉惠理子